祈り


 「洞山良介」(とうざんりょうかい)という昔のお坊さんの話です。

 若き洞山良介和尚が亡き母の供養のため、大勢のお坊さんたちにお粥を供養してその菩提を弔いました。その3日目に母が夢に現れ「汝志を守ること堅くして彼の善根力によりて我れ忉利天に生じたり」(訳=あなたの功徳の力により私は天上界へ行けました)と告げたそうです。

 

 それから後に、洞山良介和尚がお寺で修行中のことです。ある和尚様の供養が営まれた法要日のことです。老僧が大勢の修行僧たちに向い、「今私たちは、前住職のために沢山のお供えをしてご供養するのであるが、果して、前住職はこの座に還って来て下さるのだろうか?」と尋ねられました。

修行僧たちは誰も答えることが出来ませんでした。その時、洞山良介和尚が進み出て、「真心を込めてお迎えするならば、必ずお出になって下さいます」と答えたそうです。

 

 ただ故人のために思い祈る事・行う事、その真直ぐな心と姿が尊いのです。